GICにおける気候変動リスクおよび機会のガバナンス
GICの取締役会は、GICにおけるサステナビリティに対するアプローチや、気候変動リスクと機会に対する経営陣の取り組みを監督しています。
経営レベルでは、GICのサステナビリティ委員会が気候変動に関する取り組みを統括し、取締役会及び関連委員会、さらにグループ執行委員会、投資管理委員会などの関連組織に定期的に報告を行っています。2016年に正式発足した同委員会は、投資部門、リスク管理部門、コーポレート部門のシニアリーダーで構成され、現在はGICのグループ執行委員会のメンバーが委員長を務めています。同委員会の業務範囲はグループ執行委員会によって定められており、GICのサステナビリティ戦略・方針の策定、投資プロセスと運営プロセス全般にわたるサステナビリティ方針の実行推進、GICポートフォリオのサステナビリティ特性のモニタリング、対外コミュニケーションおよびパートナーシップの管理などが含まれます。
実務レベルでは、GICはサステナビリティ課題に関する研究を深化させ、サステナビリティの統合を推進するため、専門のサステナビリティオフィスを設置しています。サステナビリティオフィスは、各投資部門と緊密に連携し、サステナビリティ推進における優先事項を策定するとともに、気候変動リスクと機会への影響を把握・監視し、サステナビリティ委員会が定めた長期的目標の達成を支援しています。
各投資部門では、CIOと投資委員会が、それぞれのアセットクラスおよびポートフォリオにおける気候変動リスクと機会を評価・管理するとともに、 GICのサステナビリティ方針を投資のプロセスに組み込む責任を担っています。
気候変動リスクと機会がGICの投資戦略および投資計画に与える影響
気候変動は、現代を象徴する長期的な課題の一つであり、脱炭素政策や気候変動による物理的リスクの影響は、企業の長期的な投資価値に大きく関係します。一部の国では炭素税や排出量取引制度の導入が進み、石炭火力の段階的な廃止、再生可能エネルギー価格の低廉化、電気自動車の普及、そして世界的なエネルギー構成の変化が進行しています。こうした動きは、楽観と慎重が交錯する局面を経ながらも、世界経済の脱炭素化が進むなかで今後も続くと見られます。一方で、地球温暖化の深刻化や海面上昇といった気候変動の物理的影響は今後数十年にわたり悪化していくと見込まれます。すでに異常気象の発生頻度と被害の深刻度は増しており、短期的にも企業活動に影響を及ぼしています。
気候変動はリスクであると同時に新たな機会をもたらします。規制当局や消費者がESGや気候関連の課題に対応し、企業が事業モデルを見直す中で、新たな投資機会が広がりつつあります。
気候変動シナリオ分析による資産リターンおよびポートフォリオの耐性評価
気候変動は、物理的リスク、脱炭素化に伴う政策・技術転換のリスク、そして市場リスクの3つの面から、投資のリスクとリターンに影響を及ぼします。それぞれのリスクには大きな不確実性が伴い、シナリオ分析はGICがそれらが時間とともにどのように顕在化する可能性があるかを理解する上で有用です。
GICでは、リスクの組み合わせがどのように作用し得るかを示す独自の気候変動シナリオを以下のように策定しています。これらは網羅的ではありませんが、GICの投資戦略を考えるうえで有用な指針となっています。
GICはまた、各シナリオがどの程度現実化しつつあるかを評価するための気候シグナルを策定しています。このシグナルは、各国の政策動向、企業の取り組み、技術革新、そして自然環境の変化など、幅広い指標で構成され、脱炭素化の進捗を追跡することを目的としています。GICの分析によると、世界の現状は「不十分な対応」シナリオに近づきつつあり、脱炭素化の遅れと物理的リスクの双方でより大きな脅威に直面しています。物理的リスクが強まる中、投資家は物理的リスクへの理解と管理を一層深める必要があり、同時に適応やレジリエンスに関するソリューションへの需要も拡大していく可能性が高いでしょう。
気候関連リスクおよび機会への対応
GICは、投資と事業運営を通じて、ネットゼロ経済への世界的な移行を支援しています。この目標の実現に向け、GICは投資対象を次の3つのカテゴリーに分けて捉えています:
3つのカテゴリーは、それぞれ異なる資本と脱炭素化へのアプローチを必要とします。GICは、ポートフォリオを保護しながらこうした機会を創出・活用するため、以下の3つの主要な戦略を採用しています。
GICにおける気候関連リスクの特定・評価・優先順位づけ・モニタリング
私たちは、ポートフォリオにおける気候関連リスクを、トップダウンとボトムアップの両面から管理しています。これらのリスクを的確に特定し、評価するためには、入手できる情報の精度と一貫性が極めて重要です。そのためGICは、投資先企業に関する高品質で一貫性のある炭素排出量および気候リスクデータへのアクセスを強化するため、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)やCDPによる企業の気候リスク開示の高度化を支援しています。
脱炭素化移行リスク
ポートフォリオ全体では、GICは将来を見据えた移行整合性指標を策定し、移行リスクをより包括的に評価しています。この指標では、ポートフォリオ企業の排出量開示、さまざまな時間軸における排出削減目標、脱炭素化戦略、脱炭素化を支援する設備投資計画、そして関連する排出削減シナリオに対する実績などを総合的に評価します。このアプローチにより、GICは各企業の脱炭素化の進捗に応じ、ポートフォリオ全体の排出削減状況を包括的に把握することが可能となります。
個別の企業では、事業をより持続可能なモデルへ移行させるための施策を導入することで、移行リスクを軽減できます。GICは、デューデリジェンスの一環として移行リスクを考慮し、投資判断において移行リスクが重要とみなされる場合、企業が掲げる移行計画の信頼性を評価します。その際、事業戦略と計画がどのように設計され、移行目標の達成を支える形で整合性しているかを検証します。また、必要に応じて、移行に取り組む企業との対話や支援も継続的に行っています。
物理的リスク
実物資産に投資する部門では、デューデリジェンスの一環として気候変動に伴う物理的リスクを評価しています。たとえば、不動産部門では、資産のデューデリジェンスプロセスのなかで物理的リスク評価を実施しています。物理的リスク評価では、熱帯・温帯性低気圧、高潮、洪水、森林火災などの災害を考慮します。気候変動に対する資産のレジリエンスを高めるため、投資チームは個々の資産の物理的リスクへの曝露を軽減する予防的措置を講じることがあります。また、インフラ部門では、送電網、道路網、パイプラインなどの大規模インフラ設備を対象に、気候変動に関連する物理的リスクを評価するための個別対応型のアプローチを採用しています。
投資
GICは、投資と事業運営を通じて、グローバルに進展するネットゼロエコノミーへの移行を支援しています。気候変動対策や低炭素型資産への投資機会が拡大するなかで、私たちはこうした分野への投資を着実に拡大しつつ、気候関連リスクの管理にも注力しています。進捗を把握するため、GICは企業のグリーン収益を推計し、新たに形成されつつある低炭素経済における成長機会を特定するとともに、ポートフォリオがその変化にどの程度関与しているかを把握しています。
また、企業が報告した炭素排出量データを用いて、ポートフォリオの加重平均炭素強度(WACI)を算出しています。ただし、地球規模の脱炭素化を目標とした投資には、現時点で高い炭素集約度を持つものの、今後真剣に脱炭素化に取り組む企業への投資も含まれる場合があります。そのため、短期的にはポートフォリオ全体のWACIが一時的に上昇する可能性がありますが、長期的には低下していくことが見込まれます。
オペレーション
GICは、不要な炭素排出を回避・削減することで、自らの環境負荷を継続的に把握・管理することに取り組んでいます。その実現に向けて、環境配慮型のオフィス設計とスマートテクノロジーの活用を通じ、資源利用と排出量を適切に管理し、主要なグリーンビルディング認証プログラムに沿った運営を行っています。また、利用可能な地域では再生可能エネルギーへの切り替えを進め、ビジネスパートナーに対しても持続可能な行動に関する明確な期待を伝えています。さらに、従業員に職場内外でより持続可能な行動を実践するよう促す取り組みも推進しています。
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