2026年02月10日 — 本稿は、GICの日本オフィス拡張および移転を記念して開催されたパートナーズイベントにおいて、GIC最高経営責任者リム・チョウ・キャットが行った開会挨拶を編集したものです。
GICは本日パートナーの皆様をお迎えできることを大変光栄に存じます。本イベントはGICが日本の皆様と長年にわたり築いてきた深く揺るぎないパートナーシップを感謝する場でございます。同時にこれらの関係をさらに発展させていくという私たちのコミットメントを改めて確認し、日本を代表する多くの企業の皆様との強固な協力関係を示す機会でもあります。会場を見渡し日本の経済を牽引する素晴らしい企業の皆様にご参加いただいておりますことに改めて感謝申し上げたいと思います。これはGICが40年以上にわたり日本市場で築いてきた信頼とパートナーシップの証であります。
GICの目的と使命
ここでGIC設立の経緯と目的について簡単にご紹介いたします。GICは1981年当時の副首相ゴー・ケン・スイによりシンガポールの外貨準備を長期的に運用する目的で設立されました。その理念は当時としては非常にシンプルでありながら実に革新的なものでした。それは国家の余剰資金を短期的な利益のためではなく、世代を超えてその価値を守り高めていくために投資するというものです。私たちの使命は創設以来変わらず明確です。それは長期的な視点でGICが運用する外貨準備資産の国際的な購買力を維持しさらに高めていくことです。この理念はGICのすべての社員が心に刻んでおり、私たちのあらゆる行動の指針になっています。
日本チームはこの使命を体現し優れた成果を上げてきました。その優れた実績は自らの努力だけではなく日本におけるパートナーの皆様からの多大なご支援の賜物でもあります。私たちはこれまで様々な資産クラスにわたり多くの資本を投じてきましたが、経済構造が変革を遂げる中で日本企業への投資の比重も一層高まっております。日本はGICのグローバルポートフォリオにおいて、分散投資の観点からも新たな投資機会を提供する市場としても極めて重要な存在であり続けています。
投資環境
現在世界はかつてない変化の中にあります。世界の環境は地政学・インテリジェンス・気候変動という三つの大きな潮流によって形づくられており、それぞれがリスクであると同時に新たな機会でもあります。
地政学的環境は一段と複雑化しています。世界は多極化が進み影響力の重心が移り変わる中で、レジリエンスや安全保障への関心が高まっています。かつては地政学的変動が投資機会を生むこともありましたが、今日ではより複雑で微妙な様相を呈しています。多極化は一見安定をもたらすように聞こえますが、歴史が示すようにむしろ変動性を高めることもあります。とはいえ、こうした変化は新たな機会を生み出す可能性も秘めています。例えば今やすべての国が、より高いレジリエンス・独立性・安全保障・防衛体制の強化について真剣に考えています。これらを実現するためには、資本とイノベーションそして協働が不可欠です。まさにこういった分野こそがGICとパートナーの皆様が意義ある役割を果たせる領域だと考えます。
第二の潮流はインテリジェンス、すなわち人工知能(AI)です。AIは産業構造や投資環境を大きく変革しつつあります。私たちGICはAIのバリューチェーンにおいて、4つの領域で活動しています。第一に、バリューチェーンの初期段階において、生成AIなどの初期技術に選択的に投資しています。ここでは、将来の勝者を見極めることが極めて重要です。第二に、エネルギーや半導体インフラなどのAIを支える基盤分野への資本配分。日本が半導体素材分野で重要な役割を果たしている分野です。第三に、AIを製品やサービスに統合して価値を創出するマネタイザーへの投資。そして第四に、AIを実際に活用するアダプターへの投資です。GIC自身もその一員であり、投資判断、取引処理、業務効率化などにAIを積極的に活用しています。AIはすべての人が受け入れ活用していくべき、長期的かつ変革的な力であると我々は考えています。
第三の潮流は気候変動です。近年は以前ほど注目されなくなっているものの、依然として極めて重要な課題であることに変わりはありません。長期投資家として、GICは気候変動の「緩和」と「適応」の両面で積極的に取り組んでいます。特に「適応」は、より現実的で、かつGICがより大きな貢献を果たせる市場であると考えています。気候変動は一過性の問題ではありません。
私たちは今後も、パートナーの皆さまと協力しながら、この課題に真摯に取り組んでまいります。
日本における投資機会
グローバルポートフォリオを運用する上で、分散投資は常に私たちの基盤であり続けています。それは不確実性や市場の変動の中にあっても危機対応力を維持するための要です。しかし分散投資だけでは十分ではありません。高いリターンを生み出す可能性のあるテーマやトレンドを見極め、戦略的に資本を配分していくことが重要となります。日本はこの両方の条件を満たす国です。高度に発展した経済基盤を有し、独自の産業システムや金融システムに加え、固有のマクロ経済構造を備える日本は、GICのグローバル・ポートフォリオにおいて極めて重要な分散効果をもたらしています。同時に、日本で現在進行している構造的な変革は我々にとってとても魅力的な投資機会を生み出すと考えられます。
近年私たちが特に注目している重要なトレンドが二つあります。第一には日本がデフレの時代から脱却しつつあることです。数十年にわたるデフレを経て、過去3年間は日本銀行の目標である2%を上回るインフレ率が安定的に続いています。これは企業にとって収益拡大や営業レバレッジの効果や実質的な債務負担の軽減といった恩恵をもたらす前向きな変化を意味します。私たちは日本がすでにデフレ時代を脱しインフレまたはリフレの局面へ移行したと考え、この変化をポジティブに捉えています。
第二のトレンドは企業改革です。ガバナンス改革の進展により、日本企業の姿が大きく変わりつつあります。多くの企業が資本効率向上や株主還元の強化に取り組み、自己株式取得や資本配分の改善を進めています。こうした動きは業界再編によるスケールメリットの獲得、市場拡大、スピンオフなど、さらなる資本効率化を生み出す可能性を秘めています。また、事業承継の局面では、外部資本や専門的知見が求められる場面も増えていくでしょう。日本企業は今、成長のための再投資か、株主への還元かという重要な選択の段階に差しかかっているのではないでしょうか。GICのような機関投資家はこうした変革のプロセスにおいて、建設的な役割を果たすことができると考えています。
GICの日本へのコミットメント
日本における分散投資そしてさらなる資本展開の機会は長期的な投資先としての魅力を一層高めています。日本の高品質な製品やサービスは、今も世界のニーズに応え続けています。GICは多くのパートナーの皆さまと共に長期的な資本と専門性を提供し日本企業をグローバルなネットワークへとお繋ぎすることで、この変革を支える一翼を担っていることを誇りに思います。
GIC は日本において40年以上の歩みを重ねてまいりました。今後も日本市場へのコミットメントを揺るぎなく維持してまいります。このたび東京では新オフィスへ移転し、世界各地でも日本関連の投資を担当する合計約40名のプロフェッショナルが在籍しています。さらに、今後3年間で日本における投資専門人材を50%増員する計画を進めており、これは日本市場への強い信頼とここでのパートナーシップを一層深めていくという私たちの意思を示すものです。
私たちは日本に「留まる」ためだけにここにいるのではありません。さらなる成長と拡大のためにここにおります。今後も皆様との協働を重んじ、価値を創出するパートナーとしてともに新たな機会を切り拓いてまいります。
皆様のご支援とご協力に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
